※注意
この記事は2019年10月に実施したものになります.
はじめに
諸君,幸せであるか?
否.
この超高速で進む高度情報化社会に幸せなぞ感じる余裕なぞあるわけもない.
しかし,我々は幸せを求める.
人生は長く短い登山である
これは,かの有名な詩人「石川能美」の詩集「白山」の一説である.
嘘である.
一方で,人生とは何か.幸福とは何か.我々は目先のことに捕らわれるあまり,その単純な問いにすら答えられないでいるのではないだろうか.
我々が現在頑張っているのは何のためか.
それは幸せになるためである.
では,幸せとは何か.
それを考えたときに私は一つの結論に達した.幸せとは,「モテる」ことである,と.
では,なぜモテたいか.
それは,良い恋人並びに配偶者がほしいからである,と.
すなわち
配偶者を得る瞬間,婚姻届けを役所に提出する瞬間こそ,人生のピークではないか,
と.
つまり,幸せとは婚姻届けを役所からもらい,提出することである,と.
そこで,特に相手はいないが私は某県の市役所へ向かい婚姻届けをもらう旅に出た.
いざ市役所へ
婚姻届けを得るために市役所へ来た.
今回は,「住みやすいまちランキング」上位の市を選び,そこに婚姻届けをもらいに来た.
県庁所在地でもなければ,さほど都会でもないが,非常に立派な庁舎である.
これは,非常に良い自治体であるに違いない.
いざ,婚姻届けをもらわんと,荘厳な木製の自動ドアをくぐった.
内部へ潜入
そこには,広く落ち着いた空間が広がっていた.
騒ぎ立てるプロ市民様もそこにはなく,さながら高級ラウンジのような安堵感が広がっていた.
しかし,ここで問題が起きた
「婚姻届けってどこでもらえるんだ・・・・」
市役所には様々な窓口がある.
市役所支所ならば,様々な課がギュっと凝縮されているため分かりやすいが,ここは市役所本庁.
想定されるのは戸籍課,住民課,市民窓口課,等々様々な候補が考えられるが,ここでくじけてしまっては我々の「幸せ」ははるか遠いものになってしまうことであろう.
結婚にミスは許されない.
そこでミスを使用ものならば,一生下僕として生涯を終えることになる.
そんなことはご免である.
しかし,結婚ソムリエの,糸吉女昏氏の有名な言葉に以下のようなものがある.
結婚に必要なものは,婚姻届けと,覚悟,それのみである.
我に返った.婚姻届けをもらうことにばかり捕らわれて,肝心の「覚悟」を私は忘れていたのだ.
「覚悟」
この単純な2文字は,一人の人間にはあまりに重い2文字である.
しかし,ここで踏み出さない限り,永遠に幸福の頂点は得られないことだろう.
意を決し,私は「市民窓口課」に歩みを進めた.
市民窓口課の看板の下,私は意を決して言葉を発した.
私「婚姻届けをもらいたいのですが.」
このとき一体どんな表情をしていたのだろう.
緊張か?幸福か?はたまた背徳感から生じたニヤつきか.
正直,私にそこまでの余裕はなかった.
ただ,その言葉を発した直後,職員さんの顔が120%の笑顔に包まれた.このことは事実である.
職員さん「届け出ですね?少々お待ちください」
彼女の表情に幸せがあった.日ごろ,プロ市民を相手をする市役所職員の方.その中で,婚姻届けをもらいに来る人間は,さながら幸福の絶頂に映るだろう.
職員さんは声にこそ出さないまでも,
職員さん「(ありがとう.君は結婚するんだね.お幸せに.なんだか,私まで幸せをもらっちゃったみたい.うふふ)」
と,思っていたに違いない.
無論,私自身結婚の予定は毛頭ない.しかし,市職員の彼女に,私が幸せのおすそ分けをした事実は確かである.さながら,幸せの核爆発のごとく,「無」から莫大な「幸福」のエネルギが表出した瞬間であった.
彼女が婚姻届けの一連の資料をかけ集め戻ってきた.
職員「住民票も移されますか?」
私「いえ,とりあえず,籍だけ入れたいなと思ってまして」
職員「そうなんですね.」
既に,結婚するモードの私は,この辺の回答を難なくこなし,居るはずもない後に妻となる彼女のことを思い浮かべ,届け出の受け取りを勧めた.
職員「書き損じちゃうと困るので,2枚いれときますね」
私「あ,お気遣いありがとうございます」
1枚目すら書く予定のない届け出を2枚ももらうことに後ろめたさがなかったわけではない.
しかし,この時の私の頭は,妻との新生活に向けて頭がいっぱいだったので,さして気にならなかった.無論,妻も恋人もいないが.
受け取り
全ての説明,を終え,一式の封筒を受け取った.
職員さんのあふれんばかりの笑顔と,軽やかな「はい,どうぞ」が私には修道女からの福音にしか感じられなかった
同時に,結婚し家庭を持つことの責任を深く感じた
私「ありがとうございます」
覚悟と,希望を込めて,感謝を述べ,市役所を後にした.
終わりに
即今,日本人の晩婚化が進んでいる.
それは,若者の貧困化や,幸せの再定義など様々な理由が考えられる.
しかし,今回婚姻届けをもらうことで,その幸せが確かに其処にあることを私は学んだ.
人生は楽なことばかりではない.山あり谷あり茨あり.実際,幸福な瞬間なんて人生の1%以下に過ぎないやもしれない.
それでも我々は生きるしかない.
幸せを夢見て,私は今日も生きていく.